「働き方ウェルビーイング・ラボ」2

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キャリアウェルビーイングについて

前回のブログでは、ウェルビーイング(Well-being)が身体的・精神的・社会的に満たされた状態を意味する概念であることを紹介しました。
また、アメリカのギャラップ社(世論調査研究所)が提唱する5つの要素(キャリアウェルビーイング、ソーシャルウェルビーイング、ファイナンシャルウェルビーイング、フィジカルウェルビーイング、コミュニティウェルビーイング)についてもご紹介しました。

今回は、5つの要素のうちのひとつ「キャリアウェルビーイング」について、詳しくご紹介をいたします。

キャリアウェルビーイングの定義と重要性

キャリアウェルビーイングとは、広義での「キャリア」構築に関する幸福度を指す要素です。
働きがいや昇進といった収入を得るための仕事のキャリアだけでなく、家事や育児、勉強など生活に関わるさまざまな活動や生き方全体を含みます。
キャリアの幸福を感じるためには、必ずしも高い給料を得る必要はありません。
自分が楽しめることを見つけ、それを日々行うことが重要です。それがオフィスで働くこと、ボランティア活動、子育て、あるいは自分のビジネスを始めることなどであっても、最も大切なのは、自分が選んだキャリアや職業に従事するということです。

初めて会う人同士では「普段何をされていますか?」という話題になることが多いと思います。その質問の答えが、自分にとって充実感があり、有意義に感じられるものであれば、キャリアウェルビーイングにおいて、成功しているのだといえます。

もしも、素晴らしい人間関係や経済的な安定、良好な身体の健康があっても、日々の仕事が好きでない場合、友人や家族との会話の多くがその仕事に対する不安や不満になり、せっかくの楽しい時間を十分に楽しめず、それがさらにストレスの原因となってしまうこともあるので、注意が必要です。

アイデンティティ形成への影響

キャリアを通じて自分自身への理解や価値観が深まり、それが自己肯定感や自分の価値を感じることにつながります。
特に、自分の能力やスキルが認められ、意義のある仕事に取り組んでいると感じるとき、人は自分の存在意義を強く実感できます。

長期間の失業は、私たちの幸福度に大きな影響を与えることがわかっています。

世界的に権威のある、経済学術雑誌『TheEconomicJournal』の研究によると、1年以上の失業が続くと、気持ちが落ち込み、仕事へのモチベーションも低くなり、完全に元の幸福度に戻るまでに時間がかかることが多いという結果が出ました。
結婚や出産、離婚など人生の大きな出来事も幸福度に影響を与えますが、長期の失業は特に回復が難しいことがわかっています。

また、配偶者を失うなど悲しい出来事からは、多くの人が数年で元の幸福度に戻るのに対し、長く仕事に就けないと社会的なつながりが薄れ、孤独感が増し、健康にも影響が出る可能性があります。そのため、失業期間が長引かないように積極的に行動し、日常的な交流を大切にすることが重要です。

キャリアウェルビーイングの低下要因

仕事においてキャリアウェルビーイングが低下する原因には、主に以下の3つがあります。

・仕事への無関心
・上司や同僚との関係がうまくいっていない
・将来への不安

こうした状態が続くと、やる気が下がり、生産性も落ちてしまい、結果として組織全体に悪影響が及びます。

アメリカの世論調査機関であるギャラップ社は、168名の従業員を対象に、1日の中での熱意、心拍数、ストレスレベル、さまざまな感情を調査しました。
データを分析した結果、仕事に熱心に取り組む人は、そうでない人とはまったく異なる経験をしていることが明らかになりました。
熱心に仕事をしている人は一日を通じて幸福感や関心が高く、逆に、熱心でない人はストレスレベルが大幅に上昇していました。
特に、仕事の終わりに近づくと、熱心でない人のストレスレベルは低下し、幸福感が高まる傾向が見られました。熱意やキャリアウェルビーイングが低い人々は、ただ仕事が終わるのを待っている状態になってしまうのです。

企業のキャリアウェルビーイング向上事例

キャリアウェルビーイングを高めるためには、まず仕事の目標や意味を明確にすることが重要です。また、信頼できる人間関係を築き、サポートを受けられる環境を確保することが推奨されています。
実際にどのような事例があるのかご紹介します。

大手消費財メーカー ユニリーバ

ユニリーバの公式ウェブサイトによると、社員のキャリアウェルビーイングを向上させるために、いくつかの革新的な取り組みを行っています。
たとえば、全社員を対象に「パーパス・ワークショップ」を実施し、各自が自身の「人生の目的(パーパス)」を見つめ直し、言語化して共有できる場を提供しています。
このワークショップでは、社員が自らの価値観や強みを再確認し、それに基づくキャリアビジョンを描くサポートが行われています。

また、「フューチャー・フィット・プラン(FFP)」では、社員がパーパスやリーダーシップの強み、今後習得したいスキル、ウェルビーイングの状態などを記入し、それを基に上司と目標設定やキャリアプランについて話し合う機会を設けています。
社員は自分の成長やキャリアの方向性を明確にし、会社の目標と調和させる支援を受けられるようになっています。
また、ユニリーバでは、社員が様々なプロジェクトに短期間で参加できる「Flex」というシステムも導入し、社員が関心や目的に応じたスキルアップや経験を積めるよう工夫されています。


キャリアウェルビーイングの向上は、日々の仕事だけでなく、生活全体において充実感や前向きな気持ちをもたらします。
今回の内容が、皆さんの働き方やキャリアの考え方を見つめ直すヒントになれば幸いです。
次回はソーシャルウェルビーイングについて、ご紹介いたします。