「働き方ウェルビーイング・ラボ」3

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ソーシャルウェルビーイングについて

前回のブログでは、アメリカのギャラップ社(世論調査研究所)が提唱するウェルビーイング(Well-being)の5つの要素のうち、「キャリアウェルビーイング」についてご紹介しました。今回は、その5つの要素のうち2番目であるソーシャルウェルビーイングについて、さらに詳しくご紹介します。

ソーシャルウェルビーイングの定義と重要性

ソーシャルウェルビーイングとは、人間関係や社会的なつながりを通じて充足感や幸福感を感じる状態を指します。
それは、家族や友人、職場の同僚、地域コミュニティなど、さまざまな人間関係の中で支え合い、親密な関係を築くことで得られます。

OECD(経済協力開発機構)の「第5回幸福度白書」の報告書では、日本人の「社会的交流に費やす時間」は、全年齢層で1日3時間弱で、イタリアやドイツの半分程度と、他の国に比べてかなり少ないという結果が出ています。
特に高齢者は、社会的つながりが少ないと、孤立してしまい、うつ病や認知症のリスクが高まることが懸念されています。
社会的交流は、生活が困難な場合に、支援ネットワークを構築する手段でもあるので、積極的に交流をすることがとても重要です。

ソーシャルウェルビーイングと人間関係

ハーバード大学が75年にわたって行った「成人発達研究」によると、人の幸福感の約90%は「良好な人間関係」に左右されることがわかりました。
信頼できる相手がいるかどうかが、幸福にとって非常に重要です。
友人の数が多いかどうかよりも、心から信頼できる人が一人でもいることが大切なのだそうです。

長期間の失業は、私たちの幸福度に大きな影響を与えることがわかっています。

信頼できる人がそばにいると、脳がリラックスし、心身のストレスが和らぎ、脳内で「オキシトシン」というホルモンの分泌を促進することがわかっています。
オキシトシンは心拍数や血圧の低下にも関与し、身体的にもストレスを和らげる働きがあります 。

ブルーゾーンについて

沖縄は、ブルーゾーンと呼ばれる世界五大長寿地域(沖縄の他に、イタリアのサルデーニャ島、アメリカのロマリンダ、コスタリカのニコヤ半島、ギリシャのイカリア島)に選ばれています。
ブルーゾーンでは、高齢者を含む地域全体の、社会的つながりが根づいています。

沖縄の場合
沖縄には「模合(もあい)」という文化があり、友人や知人、親戚などが、毎月、決まったメンバーで飲み会を開き、その際に一定の金額を積み立て、メンバーが順番に受け取っていく仕組みになっています。模合は、生涯にわたってお互いを支え合うグループであり、地域社会の深い絆を象徴しています。

サルデーニャの場合
高齢者は親戚や隣人が面倒を見ており、家庭は若者と高齢者が毎日触れ合う場になっています。高齢者は負担とは見なされず、むしろさまざまな価値や地元の知識を若い世代に伝える貴重な存在と考えられているそうです。
また、高齢者も地域社会に積極的に関わり、地元のバーで友人と語り合うほか、毎年のブドウ収穫や村祭りといったイベントにも参加し、コミュニティの絆を深めています。

コロナ以降のリモートワークとソーシャルウェルビーイングについて

COVID-19のパンデミックを受けて、多くの企業がリモートワークを導入しましたが、その結果、職場でのコミュニケーションや人間関係に大きな変化が生じました。対面でのやり取りが減少し、オンライン会議が主な交流手段となったことにより、社会的つながりが希薄化し、ソーシャルウェルビーイングの低下が問題として浮上しました。

Microsoftの調査によると、リモートワークが広がった初期には、多くの従業員が孤独感を抱き、コミュニケーション不足や協力の欠如を訴える声が増えていたことが報告されています。
この問題に対応するため、企業ではバーチャルランチやオンラインチームビルディングイベントが実施されました。現在もリモートワークは多くの企業で継続しており、特にオフィス勤務とリモートワークを組み合わせたハイブリッド勤務が人気です。

この勤務形態は、企業と従業員双方にとってメリットがあり、「ウィンウィン」の関係が築かれつつあります。
リモートワークの普及に伴い、多くの企業が社員同士のつながりの重要性を再認識しています。コロナ禍における孤独感やコミュニケーション不足を解消するために、定期的なリアルな社内イベントやオフサイトミーティングなど、対面での交流機会を増やす企業も増加しています。

企業のソーシャルビーイング向上事例

日本企業でも、ソーシャルウェルビーイングに力を入れている企業があります。社員同士のつながりや支援を促進する取り組みを通じて、社会的な幸福感や充足感を高めようとしています。実際にどのような事例があるのか、ご紹介します。

グローバル企業 ソニー

ソニーは、社員が社内外のさまざまなイベントに参加し、互いに支え合う文化を育んでいます。例えば、社内での「ソニーグループ社員交流会」や、地域社会とのつながりを深めるための地域ボランティア活動などが行われています。これにより、社員の社会的つながりを強化し、ソーシャルウェルビーイングを向上させています。

大手総合電機メーカー パナソニック

パナソニックでは、社員同士がサポートし合い、コミュニケーションを活発にするための取り組みが行われています。中でも、デザイン本部では「みんなで集まって、パンを焼く。」という、イタリアのコミュニティオーブンをモチーフにした「ヒラくパン」というワークショップを開催しました。
パナソニックのホームベーカリーを使用し、知らない人同士がパンを焼いたり購入したりできるワークショップで、9日間開催し盛況だったそうです。


ソーシャルウェルビーイングは、職場でのコミュニケーションや人間関係を大切にすることが重要です。
今回の内容が、皆さんの働き方や職場での人間関係づくりに役立つヒントとなれば幸いです。
次回は、ファイナンシャルウェルビーイングについて、ご紹介いたします。