「働き方ウェルビーイング・ラボ」4

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ファイナンシャルビーイングについて

前回のブログでは、アメリカのギャラップ社(世論調査研究所)が提唱するウェルビーイング(Well-being)の5つの要素のうち、ソーシャルウェルビーイングについてご紹介しました。今回は、その5つの要素のうち3番目であるファイナンシャルウェルビーイングについて、さらに詳しくご紹介します。

ファイナンシャルウェルビーイングの定義と重要性

ファイナンシャル・ウェルビーイングとは、
「お金の面で満たされた状態」を指す言葉です。 もう少し具体的にいうと「日々の生活費をきちんとやりくりでき、将来への不安もなく、やりたいことができる状態」です。

経済的な安心感は、心身の健康や全体的な幸福感(ウェルビーイング)に直結しています。
特に日本では、人生100年時代と言われる中、少子高齢化や年金制度への不安など、将来への漠然とした不安を抱えている人が増えています。 こうした状況の中、先の長い人生を自分らしく過ごしていけるよう、計画的な資産管理の重要性が高まっています。

ファイナンシャル・ウェルビーイングは、ただ単にお金をたくさん貯めることだけが目的ではありません。大切なのは、自分の人生設計に合わせて、必要な金額を考え、無理なく資産を築いていくことです。 結婚や出産、マイホームの購入など、人生にはさまざまなイベントがあります。 これらのイベントにかかる費用を事前に把握し、計画的に資産形成を進めることが大切なのだそうです。

日本人の年代別課題と特徴

これまでの日本は、国や企業がきめ細かい制度や手厚い支援で支えてきたために、先進国の中でも日本人はお金に対する知識や感度、資産形成への意欲や行動が弱く、自律性を欠いているともいわれています。
2022年11月、政府は、新しい資本主義実現会議において、「資産所得倍増プラン」を策定、始動させると発表しました。
日本の家計金融資産の半分以上を占める現預金、現金保有の「眠っているお金」をもっと動かすことにより、国・企業・家計の活力を強め、「成長と資産所得の好循環を実現」を目指すものです。

政府の「資産所得倍増プラン」7つの柱

第1の柱 家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるNISAの抜本的拡充や恒久化
第2の柱 加入可能年齢の引上げなどiDeCo制度の改革
第3の柱 消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設
第4の柱 雇用者に対する資産形成の強化
第5の柱 安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実
第6の柱 世界に開かれた国際金融センターの実現
第7の柱 顧客本位の業務運営の確保

それぞれの年代でどのようなことに気を付けて「資産所得倍増プラン」を利用していけばいいのかを、見ていきたいと思います。

20代〜30代

初めて社会人として収入を得る中で、生活費や奨学金返済などが優先され、貯蓄や投資に回す余裕が少ない時期だと思います。
また、投資に対する知識不足により、リスクへの不安が大きい人が多いと言われています。
収入を得たばかりのため、長期的な資産形成の重要性に気づきにくいことも言えます。

・解決策
少額投資でスタート:

NISAを使えば、少額から気軽に投資を始められます。積み立てNISAなら、年間40万円まで税金がかからないので、初心者の方でも安心して投資できます。

金融教育の受講:

資産形成の基礎を学ぶセミナーやオンライン教材を活用する。野村ホールディングス(https://manabow.com/)や企業の研修プログラムが有効です。


目標設定:

短期目標(旅行費用や家電購入)と長期目標(老後資金や住宅購入)を明確にし、それに基づいた貯蓄プランを策定します。

・資産所得倍増プランの活用
つみたてNISAの活用:

少額・分散投資を非課税で行い、資産形成を早期にスタート。
金融経済教育の充実: 新設される「金融経済教育推進機構」の提供するプログラムで投資知識を増やします。

40代〜50代

住宅ローンや子どもの教育費といった大きな支出が増える一方、退職後の資産形成も視野に入る時期です。短期的な支出に追われ、長期的な資産形成が後回しになってしまうことが多いです。
この年代では、長期的な投資の重要性が増します。

・解決策
資産配分の見直し:

NISAやiDeCoを活用し、リスクを抑えながら、資産を増やせるように、投資の組み合わせを考えます。

教育資金の計画:

教育資金贈与信託や奨学金制度を活用し、負担を軽減します。

リスク管理:

生命保険や医療保険を見直し、不測の事態に備えます。

・資産所得倍増プランの活用
iDeCoの加入拡大:

iDeCoの加入可能年齢が65歳に延長され、節税効果を享受しながら資産形成を加速。


企業型DC(確定拠出年金)の活用:

企業が提供する年金制度を最大限に活用し、マッチング拠出を検討します。

60代以降

退職後の生活に向けた資産活用が重要になります。医療費や介護費用など、予期せぬ支出が増加するリスクもありますので、年金だけでは生活費を賄えない場合、計画的な引き出し戦略が必要です。

・解決策
リバースモーゲージの活用:

死亡時に自宅を売却して借入金を清算できる、リバースモーゲージ型住宅ローンを利用し、不動産を流動化することで生活資金を確保します。

引き出し戦略の設計:

NISAやiDeCoで積み立てた資産を計画的に引き出し、安定的なキャッシュフローを実現します。
セカンドキャリアの模索: 趣味や特技を活かした副業やパートタイムの仕事で収入源を確保します。

・資産所得倍増プランの活用
NISA制度の恒久化:

非課税期間が無期限化される新制度を活用し、老後の運用を安心して行います。


金融相談窓口の活用:

企業や地域の金融機関が提供する相談窓口を活用し、具体的な資産活用方法を学びます。

日常生活で実践できる小さな習慣

ファイナンシャル・ウェルビーイングは、特別なスキルや知識がなくても、日々の生活の中で実践できるものです。日々の生活の中に取り入れられる小さな習慣を、いくつかご紹介します。

家計簿をつける
家計簿アプリを使い、収入と支出を可視化。
月々の収入と支出を一覧にすることで、自分の経済状況を正確に把握できるので、自由に使えるお金の把握ができ、無駄な出費を特定できます。その結果、毎日コーヒーを買う習慣を見直し、節約分を投資に回すなど活用できます。

つみたてNISAやiDeCoを活用した少額投資
収入の5%を自動的に投資に回す設定を行うなど、手間を省きながら、「未来の自分への貯金」と考え、小さな習慣を楽しむ。
また、給料日などに、自動的に貯蓄口座に振り分ける自動積み立てもおすすめです。

「お買い物リスト」を作る
衝動的な買い物を避けるため、欲しいものができた時にはリストに追加をします。
そうすると、いったん立ち止まり本当に必要なものかどうかを考える機会が生まれます。
必要なものを買い物することで、買い物の満足感が得られ、散財を抑えることができます。

心理的な安心を得るための備え
緊急用貯金(3か月分の生活費)を確保する。家計の「安全基地」を持つことで、不測の事態にも安心感を得ることができます。

企業の取り組みと新しいサービス

日本企業のファイナンシャル・ウェルビーイング向上施策の中で事例をご紹介いたします。

楽天グループ株式会社

株に関する制度として「ストックオプションプログラム」や「従業員持株会」があります。「ストックオプションプログラム」は報酬プログラムの一つとして、楽天の株式100株を1円で購入できる権利を付与する制度です。業績や評価に基づいて最大年に2回権利が付与されることがあります。「従業員持株会」は社員が自身で設定した金額を給与から天引きし、定期的に楽天の株式を購入していく制度です。中長期的な資産形成につながります。

KABU&

従業員持株会のような仕組みをさらに進化させたサービスとして、前澤友作氏が立ち上げた「KABU&」があります。KABU&は、日常的な消費活動を通じて、誰でも気軽に株式投資を始められる画期的なサービスです。電気や携帯電話などの料金を支払うだけで、まるでポイントを貯めるように株を手に入れることができるため、投資のハードルがぐっと下がります。


ファイナンシャルウェルビーイングは、単にお金の知識を身につけるだけでなく、自分の人生を豊かにするための第一歩です。今回の内容が、皆さんの働き方や職場での人間関係づくりに役立つヒントとなれば幸いです。
次回はフィジカルウェルビーイングについて、ご紹介いたします。