フィジカルウェルビーイングについて
前回のブログでは、アメリカのギャラップ社(世論調査研究所)が提唱するウェルビーイング(Well-being)の5つの要素のうち、ファイナンシャルウェルビーイングについてご紹介しました。今回は、その5つの要素のうち4番目であるフィジカルウェルビーイングについて、さらに詳しくご紹介します。
ファジカルウェルビーイングの定義と重要性
フィジカル・ウェルビーイングとは、単に病気や怪我をしていないという状態ではなく、
心身が健やかで、日常生活を活発に送れる状態、自分がしたいと思ったことやするべきことを不自由なくこなすエネルギーがある健康状態を指します。
そのためには、生活習慣の基本である 「栄養」 「運動」 「休養」の3つの要素のバランスを保つこと が必要とされています。
ビジネスにおいては、仕事に対するモチベーションを保てているか、ポジティブに仕事に取り組めているかも関係します。
このフィジカル ウェルビーイングは、労働時間や業務量、職場環境などの影響を受けやすいため、企業努力によって従業員の健康とメンタルヘルスを向上させることが可能です。
生活習慣の基本:食事について
食事に関する現状の日本の課題として、特に以下の3つの問題が挙げられます。
食塩摂取量の過多
日本人の1日の食塩摂取量は平均約10gで、国際基準で推奨される6g以下を大きく上回っています。特にカップ麺や漬物、干物などが塩分過多の原因に。これが続くと高血圧や心臓病、認知症のリスクも高まると言われています。
減塩には、減塩調味料や香辛料を使った調理法で改善できます。例えば、ハーブやレモンを使うと効果的です。さわやかな風味で満足感を得ながら塩分を減らせます。小さな工夫で、健康的で美味しい食事を楽しみましょう。
超加工食品の摂取増加
超加工食品とは、ソーセージや菓子パン、ポテトチップス、清涼飲料など、工業的に加工されて作られた食品のことです。これらは便利ですが、食べ過ぎると健康に影響を及ぼす可能性が指摘されています。例えば、大腸がんやうつ病、認知症のリスクを高めるという研究結果もあるのです。
健康を守るためには、旬の野菜や果物、未加工の穀物や魚など、自然で栄養価の高い食品を選ぶことが大切です。これにより、カロリーの摂り過ぎを防ぎ、必要なビタミンやミネラルを効率よく摂取できます。少し手間をかけて自然な食品を選ぶことで、体も心も元気になりましょう。
孤食
現代の日本は、少子高齢化や、独世帯や夫婦のみの世帯、ひとり親世帯の増加により、孤食や外食が増加しています。
孤食や外食の増加は、好きなものばかり食べる、濃い味付けに慣れる、食事時間が不規則になるなど、栄養の偏りや生活習慣病のリスクを高めます。一方、共食はマナーを学び人間関係を深めるだけでなく、ストレスを軽減する効果もあります。家族や友人、同僚との食事、地域の食事イベントなどを活用すれば、孤食の問題解決につながります。一緒に食卓を囲むことで、食事の楽しみが広がり、栄養バランスが整い、心身の健康をサポートできます。
生活習慣の基本:運動について
スポーツ庁は、成人の運動習慣を高めるため、週1回以上のスポーツ実施率を70%に引き上げるなどの目標を掲げています。しかし、令和5年度の調査では実施率は52%にとどまり、特に女性が49.4%と前年より低下しています。一方、70代の実施率は男女ともに60%を超え、運動が習慣化していることがわかります。
また、体力調査では、子育て世代である40代女性の体力が多くの項目で低下していることが報告されています。
Sport in Life プロジェクト
スポーツ庁は、スポーツを行うことが生活習慣の一部となるような社会を目指し、「Sport in Lifeプロジェクト」に取り組んでいます。
このプロジェクトは、生活の中にスポーツを取り込むことを目標に、様々な取り組みを行っています。
ここスポ(https://cocospo.go.jp/)
スポーツ庁が運営する、スポーツを楽しみたい人と楽しんでほしい人が繋がる
“今したいスポーツ”が見つかるスポーツ情報ポータル です。
スポーツイベントや大会の開催のお知らせや、職場や家の近くで身体を動かすことができるジムや体育館などの施設情報、または、丁寧にコーチングをしてくれるスポーツクラブや好きなスポーツを一緒に楽しむコミュニティの情報など、スポーツ情報を様々な視点から探すことができます。
生活習慣の基本:休養について
OECD(経済協力開発機構)の2021年版の調査では、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、33カ国の中で最も短いという結果でした。ちなみに、平均時間は8時間28分で、
最も睡眠時間が長買ったのは、南アフリカの9時間13分でした。
睡眠不足は、翌日の眠気やパフォーマンスの低下だけにとどまらず、
質の良い睡眠がとれている人と比較して糖尿病になるリスクが1.5~2倍になることも分かっています。
個人でもできる睡眠不足対策
朝食を毎日とる
きちんと朝食をとることで、体が目覚め、1日のスタートをスムーズにするだけでなく、体内時計のリズムも整えられます。
適度な運動
昼間に運動習慣のある人たちは、よく眠れるという調査報告があるそうです。
起きた時に朝日を浴びる
寝床に入る時間が遅くなっても、朝は一定の時間に起きて、太陽の光を浴び、体内時計をきちんと調整することが、夜眠くなる時刻を一定にすることにつながります。
眠りやすい環境づくり
寝つきの良し悪しや睡眠の質は、温度・湿度などにも影響されます。寝床に入っている状態での皮膚の周りの温度が33℃前後になっていることが快適な睡眠のためのポイントです。
企業の取り組み
日本企業のフィジカルウェルビーイング向上施策の中で事例をご紹介いたします。
富士フイルムグループ
2020年に以下の「7つの健康行動」を設定して、グループ従業員に実践を呼びかけています。
1.週1回以上、体重をはかる
2.自分の健診結果を確認する
3.週1日以上、お酒を飲まない日をつくる
4.1日6時間以上の睡眠をとる
5.平均30分/日以上歩く
6.直近の歩活(あるかつ)にエントリーする
7.たばこを吸わない
ウォーキングイベント 「みんなで歩活」(あるかつ)
国内グループ全体で、チームを組んで平均歩数を競うゲーム感覚のウォーキングイベント「みんなで歩活」を2016年から春・秋の年2回実施しています。
アシックス
以下の5つを指針として、健康推進活動に取り組んでいます。
1.健康管理・増進体制の拡充
2.ヘルスリテラシーの向上支援
3.生活習慣の改善支援
4.メンタルヘルス対応の強化
5.多様な人財が活躍できる職場環境
従業員をモデルとしたVDT対策の動画配信
この取り組みは、PC/スマートフォン/タブレットなどを扱う作業などによる視覚疲労や肩こりといった、いわゆる「VDT症候群」と呼ばれる症状を予防・改善することを目的としています。
フィジカルウェルビーイングは、健康的な生活を送るために、食事、運動、休養のバランスが重要です。今回は、具体的な課題や対策、そして企業の取り組みについてご紹介しました。
私たち一人ひとりが、健康的な生活を送るためにできることはたくさんあります。 この記事が、読者の皆様の健康に対する意識を高めるきっかけとなれば幸いです。
次回はコミュニティウェルビーイングについて、ご紹介いたします。